【いまこそ多文化共生を考えるリレートークvol.2】テレビでは分からない脱北者のリアル~祖国への愛と自由の葛藤

みなさん、こんにちは。ボーダレスハウスのYuyaです。

ボーダレスハウスでは、コロナ禍で国境に分断が起こってしまっている中で、世界をふたたび繋いでいける人を応援したいと考えています。

そんなみなさんのキャリアや人生の選択の参考になればと思い、「#明日をグローバルに。世界に挑む○○さんによるトークセッション」を開催して参りました。
トークセッションの詳細と過去映像はこちら

そんな中で、私たちは一つの問題に出会いました。
ジョージフロイドさんの死によるblack lives matterキャンペーンとデモです。

ボーダレスハウスが目指す社会とは「お互いがリスペクトし合える差別偏見のない多文化共生社会」です。

私たちが目指す多文化共生の最初の一歩、それは世界に多様な価値観が存在しており、それを受け入れること・知ることです。

そんな私たちだからこそ、この問題に対してできることがあるのではないかと思い、多文化共生社会を目指し、悩みながらも活動し続ける3名のゲストをお呼びし、「いまこそ多文化共生を考える」オンライントークセッションを企画しました。
企画の想いについてはこちら

本日は7月2日に開催されたHEO JUNさんによるトークセッションをレポートさせていただきます。

「自由を掴み取るのに17年かかった。」北朝鮮で生まれ、韓国に逃れたJUNさんの人生録とは

今回ゲストでご登壇頂いたJUNさんは1992年に北朝鮮で生まれ、政府に疑問を持ち2009年に脱北をしてからは韓国でyoutubeなどを通して活動されている脱北活動家です。

ニュースでは拉致問題や、核保有など、なにかと取り上げられておりますが、国内の状況や市民の生活・文化については全く見えてきません。

海を挟んですぐの隣国なのに近いようで、とても遠い国、北朝鮮。

今回のイベントではニュースでは知ることができない北朝鮮で生きる市民のリアル、そして脱北者の現状をJUNさんにお話していただきながら「国境と相互理解」について一緒に考えていきました。

当時10歳の私は強制収容所で母と再会しました。

JUNさんの脱北のストーリーは私たち聞き手にとっては衝撃的なお話でした。
JUNさんが脱北を考え始めたのは。お母さんが脱北しようと試み捕まってしまった時、まだ10歳だったJUNさんはお母さんとの再会を強制収容所で果たしました。

北朝鮮が世界で一番豊かな国だと唱える共産党員の家族のもとで過ごし、教育も受けてきたJUNさんにとって、強制収容所で見たお母さんの姿は、初めて生まれてきた北朝鮮という祖国に疑問を抱いた瞬間だったと仰っていました。

それから4年後、JUNさんは初めて祖国を出ました。

世界で一番素晴らしい国だと言われていた祖国の虚像。

14歳の頃、お母さんとの再会を目指し、中国へ脱北したJUNさん。
ずっと祖国は世界一の国だと教えられていたJUNさんは、脱北して初めて見た北京の街並みに衝撃を受けたと仰っていました。

小さいころから一番世界ですばらしい国だと教えられていた祖国の姿は虚像でしかなかった。JUNさんの政府への疑問は膨らんでいきました。

一度目の脱北はすぐに北朝鮮に連れ戻され、そこから2度目の脱北を試み、2010年、韓国へ渡りました。

「わたしが求めていたのはなにもない草原でハンバーガーを食べる平凡な日常。自由を手に入れるためにたくさんのものを諦めました。自分の人生・家族・国・友人。それでも韓国での一日目は私にとって人生で一番幸福だと感じた一日でした。」

自由を手に入れるためにかかった17年の月日。
そして諦めなければいけなかったいろんな可能性。

それを聞いて、改めてなんでもない日常がこんなにも近くの国では非日常であること、そして自由の尊さをJUNさんのお話から感じ取りました。

JUNさんの自己紹介動画を詳しくご覧になりたい方は下記リンクから字幕を日本語に変更してぜひお聞きください。


 

韓国での新しい日々、JUNさんの今後の目標

ライフストーリーのあと、JUNさんは私たちの多くの質問に答えてくださいました。
韓国では政府の保護下で生活していることや、脱北者のなかでもランクがあり、それによって韓国政府の保護のレベルが変わることなど私たちの知らなかった脱北者の方のリアルがそこにはありました。

JUNさんのお話から気づいたことは「脱北者」というイメージでくくってしまっていたけれど、脱北者の人々の日常は私たちの日常と変わらないことです。

普段は働いて、友人と共に休日を過ごす何気ない日常は彼らにとってかけがえのないものであり、同時に国境やルーツは違えど、私たちとおなじ感覚・感情を持っているのだと感じられました。

JUNさんは最後にこのようなメッセージを私たちに仰っていました。

「確かに北朝鮮の政府の指針は私も疑問に思うことが沢山あるが、それでもやはりフェアな報道を世界には行ってほしいし、皆さんにもフェアな報道を受け取ってほしいです。私は自分の生まれた故郷が好きです。とても美しい景色がある街です。そこに住む人々も自由を制限されながらも日々を大切に生きています。どうか皆さんには政府としての北朝鮮ではなく、そこに住む人々のことを知っていってほしいと思っています。」

テレビのニュースで見ることや知ることが出来るのはほんの一部。
生身の人間の営みがニュースの裏には必ずあることを知る必要性を感じられたトークセッションになりました。

沢山の素敵な感想をいただいたので、数名記載させていただきます。

大学生のありささん(仮名)
「自由という二文字を手に入れるのに17年かかった、という言葉は本当に胸にくるものがありました。人生の背景が違えば、言葉の意味や重さも変わってくるということをこれほど強烈に感じたことはありません。韓国語はわからないですが、とても伝わってくるものがあり、うんうんと頷きながら聞いてしまいました。 そして「今日僕がした話で韓国のことを悪く思わないでほしい」という言葉や、 「家族にお金を送りたい」「貢献したい」という言葉など、JUNさんが本当に広い心と大きな愛を持った方だということが伝わってきました。 いろんな困難を乗り越えてきたことが、人への思いやりに繋がっていることはJUNさんの強さだと感じました。」

社会人のりょうさん(仮名)
「脱北者の方のリアルなお話が聞けて、自由や平凡な日常って当たり前じゃないと思ったし、脱北者の方の中にも格差というか、お金持ちだけが脱北できるという現実があることも知れました。また、日本も韓国も北朝鮮の情報は政治戦略として使っていて、本当の国民の姿はあまり知ろうとしていない気もしましたし、
脱北者が考える韓国の人の意識の差や統一に関するリアルな声を聞いて、もっと改善する余地やメディアや教育がするべきこともあると思いました。」

残念ながら有料開催のため、トークセッションの映像をお見せすることはできませんが、今回のトークセッションのレビューでJUNさんについて興味を持ってくださった方はぜひJUNさんのYOUTUBEチャンネルをご覧ください。

JUNさんのYOUTUBEチャンネル

映像は韓国語となりますが、英語字幕や日本語字幕のものも多くあります。

そしてボーダレスハウスでは参加者の皆様からの熱い要望もあり、JUNさんとのトークセッション第二弾も企画中ですので、ぜひ続報をお待ちくださいませ。